歯列矯正を受ける前に、どのような仕組みで治療をしているのか気になるという方のために、歯列矯正の仕組みについて解説いたします。
■歯列矯正の仕組みについて
歯列矯正は、歯に矯正装置をつけて歯を動かして行う治療です。
そう聞くと、「歯って動かせるものなの?」と不思議に思うかもしれません。
治療を受けている時、どのようなことが口の中で起きているのか気になる方も多いのではないでしょうか。
■歯はどのように生えているのか
歯は、実は顎の骨から生えているものです。
歯茎に埋まっているだけと思っている方もいらっしゃいますが、実はそうではありません。
歯の根の部分を歯根といい、歯根と歯槽骨(しそうこつ)と呼ばれる顎の骨との間に歯根膜と呼ばれる繊維状の組織があります。
この歯根膜は、堅いものを噛んだり、柔らかいものを噛んだりした時の圧力センサーとしての働きがあり、皆さんが物を食べる時に噛む強さをコントロールしてくれています。
■歯科治療で歯を動かす力をかけたとき
矯正装置を歯に装着すると、ゆっくりと歯に圧力をかけて動かしたいほうに常に力が加わっている状態になります。
このように歯に矯正力が掛かる事で、矯正装置が付いている側面の歯根膜が伸びていきます。
代わりに反対側の歯根膜は圧縮されます。
すると、歯槽骨である顎の骨の表面に変化が生じます。
歯根膜の先の歯槽骨表面では骨芽細胞と呼ばれる骨の元になる細胞が現れるのです。
そして歯槽骨を新しく造っていきます。
圧縮された歯根膜の歯槽骨では破骨細胞と呼ばれる骨を溶かす細胞が現れ 歯槽骨を吸収していきます。
こうして、歯を動かした後も、土台である歯槽骨もゆっくりと変化し、動かした後の歯が固定されるのです。
■矯正治療が長期間かかる理由
このように歯を動かす事で、土台である顎の骨では新しく骨が生まれたり、吸収されたりしています。この変化は成長時にも見られます。
骨吸収で古い骨が吸収され壊される一方、新しい骨が生成され、それを繰り返して新陳代謝を行います。
矯正治療はこの体の自然の作用を利用している治療法であるため、体の新陳代謝に合わせてゆっくり治療する必要があるのです。
あまりにも強い力で歯を動かしてしまうと、歯根膜に意図しない変性組織が生じたり、歯槽骨が解けてしまう歯根吸収が起きてしまったり障害が起きることがあるからです。
早く治療を終わらせたいのでもっと強くしてほしい、そういう風に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが歯列矯正は人間が本来持っている自然の新陳代謝を利用して行う治療ですので、無理は禁物です。